20XX年 東京都練馬区
夜、真っ暗闇の中、この平和な街の出入り口に怪しい男が現れた。
何所が怪しいかというとまず、今の季節は夏なのに冬場によく使うコートを着ていること。
次に、夜なのにサングラスをかけていてしかも帽子まで被っているのである。
そして最後に、男は長いズボンを履いているのだ、ここまでくれば誰だって怪しいと思うだろう。
その怪しい男は、辺りを見回しながら、カツカツと足音をたてて練馬区に侵入していった。
こんな悪魔の様な事件が起こるとはこの時、誰も思っていなかった―
朝、練馬区の人々がやっと起き始めた頃だった。
いきなり練馬区に大きなだみ声が響いた。
「大変だー!」
そう、それは野比家に居候しているお手伝いロボット、ドラえもんの声だった。
野比家の二階では、のび太が寝ている光景と、ドラえもんがジタバタしている光景が同時に見られた。
ドラえもんは慌てふためいて押入れを開いたり、引き出しを開いたりしていた。
「スペアポケットが無い!」
ドラえもんは、そう叫ぶとまた探し始めた―
「どうして、無いんだ。スペアが・・・?」
ドラえもんは、まだスペアポケットを探していた。
何所にも見当たらないのだ、いつもしまっていた押入れを探しても見当たらない。
時計を見るともうそろそろのび太が起きなければいけない時間だった。
慌てるドラえもんの脳裏にある考えが浮かんだ。
初めはドラえもんもまだ信じたくなかった。そんな事がありえるわけないと自分でその考えを忘れようとしていた。
しかし、ドラえもんはまさかまさかと思いながらその考えを口にした。
「スペアポケットが盗まれた・・?」
それしか考えようが無かった。何所にも無いならこの可能性しか無い。
ドラえもんはそれなら・・・と思い、ポケットから携帯電話の様な物を取り出した。
どうやらその秘密道具は現代から未来への連絡機らしい。
そう、ドラえもんはタイムパトロールに連絡を取ろうとしているのである。
ツーツーツー… しかし、未来から聞こえる声はエラー音しか聞こえなかった。
「くそ!」
ドラえもんは連絡機を床に叩きつけた。スペアポケットが盗まれるという事はそれ程重大な事件だったからである。
もしもスペアポケットの中の秘密道具が21世紀に出回ったら歴史が滅茶苦茶になってしまうのである。
そして、歴史が滅茶苦茶になるという事は未来に生きているほかの人が消えてしまったりしてしまうかもしれないという事である。
ドラえもんはさっきよりも慌て方が酷くなった。
「う〜ん。」
のび太はそのうるささのせいか、布団から急に起き上がった。
そして、枕の隣に置いてある眼鏡をかけるとドラえもんに問いかけた。
「何なんだよ。この騒音は。」
そう言うのび太の目は少し怒っていた。
ブルルルル… その時、窓の外からいつも聞きなれた音が聞こえてきた。
そう、いつものび太達が使っているタケコプターのプロペラの音である。
「何だ!」
のび太はそう叫ぶと窓を勢いよく開けた。
すると、窓の外にタケコプターを付けた怪人物がいた。
「うわああああ!」
のび太はそう叫ぶと床にシリモチをつき、震え始めた。
今までの冒険のおかげかドラえもんは瞬時にポケットから秘密道具を取り出した。
その秘密道具の名前は空気砲、ドカンと言うと空気の塊が発射されるという道具である。
怪人物はそれを見ると何故か少し笑い、野比家の窓に近づいた。
「撃つぞ!」
普通の人なら見たことも無い物を構えられると少しの間動けなくなるはずだが怪人物は驚きもしなかった。
逆にドラえもんが驚き、少しの間動けなくなってしまった。
怪人物はその一瞬の内に窓から侵入し、ポケットからナイフを取り出した。
そして怪人物は震えているのび太の首にナイフを当てた。
「22世紀ネコ型ロボット、ドラえもん君、この子がどうなってもいいのかね?」
怪人物はケラケラ笑いながらドラえもんに話しかけた。
ドラえもんは今まで体験してなかったこの出来事に対応できなかった―
「何が・・・目的だ」
ドラえもんからはまるで滝の様に汗が流れている。
本当ならもっと良い対応があるのだが、ドラえもんはそんな対応の仕方は知らない。
ドラえもんのその言葉を聞くと、怪人物は静かに笑った。
「目的は・・・・君だよ」
ドラえもんは驚き、捕まっているのび太も驚いたようだ。
「我らにはある計画があってな、この計画を実行するには、後もう一人分の22世紀の科学が必要なんだ」
怪人物はケラケラ笑いながらドラえもんとのび太に説明した。
ドラえもんはその言葉を聞いてからしばらく、まるで銅像の様に動かなかった。
そして、ドラえもんは何かを考えた後、四次元ポケットに手を突っ込んだ。
「何!?こいつがどうなっても良いのか?」
怪人物は交渉に従わなかった事に対してかなり驚いた様子だった。
「のび太君は助ける、だけど僕は君らの組織には入らない!」
ドラえもんはそう言うとポケットからジャンボガンを取り出し、銃を構えた。
しかし、怪人物はゲラゲラ笑っていて脅えてもいない、むしろ喜んでる様だった。
「君が俺を狙うのは自由だけどね、この少年とこの家も破壊されるよ。」
カラン ドラえもんの手からジャンボガンが滑り落ちた。
ドラえもんはその事に気づいていなかった。ただ夢中で相手を倒すという事を考えていた。
怪人物はゲラゲラとうるさい位、ずっと笑っている。
しかし、ドラえもんは挫けず、ポケットからタチバガンを取り出した。
タチバガンとは撃てば弾が当たった相手と自分の立場を交換する事ができる銃である。
「喰らえ!」
バン! ドラえもんはタチバガンの引き金を思いっきり引いた。
タチバガンの弾は勢い良く怪人物へと向かっている。
怪人物はポケットから時計の様な物を取り出した。ウルトラストップウォッチだ。
怪人物はウルトラストップウォッチの上にある部分を押した。
すると、タチバガンの弾は止まり、のび太とドラえもんの行動も止まってしまった。
「さて、このまま連れて行っても良いのだが、それだと服従してくれないからな・・・・そうだ。」
怪人物は何を考えたかと思うとのび太に近づき、銃を取り出した。
今まで持っていたナイフは窓から捨ててしまったらしい。
怪人物は銃をのび太のこめかみに当てると、ウルトラストップウォッチの上にある部分を押した。
時は動き始め、ドラえもんは驚き、のび太も驚いていた。
「ドラえもん君、こいつを殺すぜ、お前が怪しい行動をしたら・・・バンだ。」
ドラえもんとのび太はさっきよりもさらに驚いた。のび太は今にも気絶して倒れそうになった。
ドラえもんは怪人物に近づいてきた。
「ドラえもん、駄目だ!近づかないで!」
のび太は涙を流しながら必死に叫んだ。だが、ドラえもんの固い決意は動かなかった。
「僕は、君らの組織に入る、だから・・だから・・・」
ドラえもんものび太と同じで大量の涙を流した。
「のび太君を・・放してくれ。」
ドラえもんがそう言うと怪人物はのび太を突き飛ばし、ドラえもんを連れて窓から外へ出て行った。
「ドラえも〜ん!」
のび太がドラえもんに向けて叫んでも、ドラえもんは戻って来なかった―
彼は闇の兵士となった。
親友を守る為―
「ドラえもん・・・」
のび太は窓から空をずっと見続けていた。
ドラえもんがあの怪人物を倒して戻ってくるんじゃないか、そういう期待が心の中にあったからである。
しかし、そう待っている時間も無かった。もうすぐ8時になり、玉子が起こしに来る時間なのだ。
そして8時になると案の定、玉子が起こりながら階段を上がってくる音が聞こえた。
だがのび太はドラえもんが戻ってくるまでそこで待つつもりだった。
絶対に帰ってくる― のび太はそう信じていたのだ。
ガラリ 玉子が引き戸を開け、のび太の部屋に入ってきた。
「あれ?ドラちゃんは?」
玉子もドラえもんがいない事に気づいたらしく、部屋を見渡し始めた。
「ドラえもんは・・・ドラえもんは・・・」
のび太はドラえもんの事を言おうとしたが、どうしても言えなかった。
言おうとすると目から涙がドボドボと流れそうだったのだ。
「どうしたの?ドラちゃんがどうかしたの?」
玉子はのび太に近づいてくる。かなり心配している様子だった。
のび太は玉子に何も言わない事にした。窓の外をずっと見つめている事にしたらしい。
だが、のび太も学校に行かなければ両親をもっと心配させるという事に気づき、学校へ行く用意をし始めた。
玉子は少しおかしいと思いながらのび太の部屋を出て行った。
『首領、最後の暗黒戦士となる者を我が仲間に入れる事に成功しました』
ドラえもんとさっきの怪人物は練馬区を離れ、隣町の上空を飛んでいた。
そして怪人物は何所かへ、多分怪人物達のアジトであろう場所へ連絡をしていた。
連絡している器具はドラえもんが未来へ連絡を取る時に使った器具と同じのようだ。
ドラえもんはさっきから黙って怪人物の隣を飛んでいる。
『はい首領、今からそちらへ向かいます。』
怪人物はそう言うと連絡を切った―
のび太は学校でいつもと同じ様に振舞っていた。
いつも通り遅刻し、いつも通り居眠りして普通の人にとっては何も無いとしか思えなかっただろう。
のび太はあの事を隠した方がいい、他の人に迷惑がかかる、そう考えていたのだ。
だが、のび太がおかしいという事にいち早く気づいた少年がいた。
その天才の名前は出木杉英才、そう、お馴染みのキャラクターである。
キーン、コーン、カーン― 放課後を告げるチャイムが学校に鳴り響いた。
のび太はそのチャイムを聞くとホッとした。一番おかしいと思われやすい学校が終わったからだ。
「のび太ー、一緒に帰ろうぜ。」
ジャイアンとスネ夫と静香がのび太を呼んだ。
のび太はその三人の元へと行こうと走り出した。その時、三人とのび太の間に出木杉が現れたのだ。
「なっ何?出木杉君。」
のび太の頬に冷や汗が流れる。
「のび太君、君僕らに何か隠しているね。」
のび太は出木杉の質問になんとか嘘の答えを言おうとした。
近くには、ジャイアン、スネ夫、静香の三人がいつのまにかいる。
だが、ムダだった。出木杉は本当の事だけを知る眼だ。
のび太はその眼を見ると参ったらしく、頷いてしまった。
「よし、じゃあとりあえず空き地へ行こう。」
出木杉は何を考えたか四人を空き地へと連れて行った。
空き地に着くと、五人はすぐにランドセルを地面に置いた。
これは寄り道する時の習慣になっているのであろう。
出木杉は空き地でもう一度のび太に問いかけた。
「のび太君、君の秘密とはどういう秘密だい?」
のび太はさっきと同じ事を考えていた。
自分が周りの人にこれを知らせれば周りの人の迷惑となる、そう考えていたのだ。
だが、のび太は言い逃れは出来そうにも無かったのであの事を話してしまった。
それを聞くと、他の四人は大きく驚き、のび太の近くに駆け寄り、さらに質問し始めた。
「やめてくれ!」
のび太はそう叫ぶと、ランドセルを背負い家へと帰ってしまった。
四人は少し気まずくなり、四人もランドセルを背負い家へと向かった。
カツカツカツ― 怪人物とドラえもんが何所かの廊下を歩く音が響く―
ドラえもんはさっきから全然喋っていないし、まるで冷たい歩く銅像の様にも感じられた。
二人が歩いている廊下には所々に大きなドアがあり、そこの横には実験室等色々と部屋の使い道が書かれている。
そして怪人物は今まで見た中で一番でかいドアの前で立ち止まった。そのでかいドアには巨大な龍が描かれていた。
この龍はこの組織の計画に何か大きな関係があるのだろうか―
怪人物がドアの横にある箱に手を入れると巨大なドアが音をたてて開き始めた。
どうやら指紋で人を判断して開くようになっているらしい。
ドアの向こう側には巨大な椅子があり、その椅子には男が座っている。
怪人物はその男を見ると、丁寧に礼をした。どうやらこの男が首領らしい。
「よく来た。そのネコ型ロボットがドラえもんかい?」
首領が質問をするとドラえもんは頷いた。ドラえもんが頷くと首領は少し笑った。
「これで計画は完成だ。」
首領がそう、呟いた―
「ただいま―」
のび太は本当に家へと帰ってきた。
のび太がただいまと言うと、家の奥からおかえりの声が聞こえてくる。
いつもの光景だった― しかし、本当はいつもじゃないという事をのび太は知っていた。
ドラえもんが、いないのだ。
のび太はいつもなら走って上がる階段を静かに黙って上がって行った。
部屋に戻ったがやはりドラえもんは部屋にいない。
だが、朝には気がつかなかった物がそこにあった。
机の上に銃が二丁あるのである。そう、朝ドラえもんが使ったジャンボガンとタチバガンである。
この二丁がまだ残っていたのである。という事は武器があるのだ。
のび太の心の中の希望が大きく膨れ上がった―
ドォン! 何所かで大きな爆発が起こった―
のび太はその爆発の音を聞くと本能的に二丁の銃を掴み、爆発が起こった場所へと向かおうとした。
のび太は玄関を勢い良く飛び出たが、外に出ると急に動かなくなってしまった。
玄関の外の物、ほとんどが煙に包まれて見えなかったのだ。
得体の知れない事を見ると人間は本能的に動けなくなってしまうのである。
そして、のび太はさらに得体の知れない物を見てしまった。
何所からか湧き出てくる煙の奥に、不気味な人影が見えたのである。
その人影は普通の人の様だが、何所となく不気味な感じがするのだ。
のび太は震え上がり、しばらく動けなくなった。
その間に不気味な人影はのび太に一歩一歩近づいてくる―
のび太は手に持っている二丁の銃を構えようとした、だが手が動かないのである。
そして、とうとう煙の森から不気味な人影の正体が現れた。
「俺様は暗黒戦士、貴様は俺様達の偉大なる計画の為、死んで貰うぜ」
その不気味な人影、暗黒戦士はケラケラと笑いながらのび太に向けて言った。
この言葉を聞いてのび太の恐怖はさらに大きくなった。
死んで貰うと言った暗黒戦士の眼は本気だった。
暗黒戦士はポケット、どうやら四次元ポケットらしき物に手を突っ込むと、マシンガンの様な物を取り出した。
「23世紀戦闘兵器、ジャンボマシンガンだぜぇぃ!」
暗黒戦士はそう叫ぶと、ジャンボマシンガンのスイッチを押した。
その瞬間、ジャンボガンの弾が何発も勢い良く発射された。
のび太は間一髪で全ての弾を避け、立ち上がった。避けた瞬間、恐怖が消えたのだ。
のび太は立ち上がると、ジャンボガンを構えた。
恐怖が消えると共に、のび太の心に勇気が芽生えたのである。
バァン! のび太がジャンボガンの引き金を引くと、物凄い音が響いた。
その音は、のび太の銃の腕によって引き出された力であった。
ジャンボガンの弾丸は暗黒戦士の持つジャンボマシンガンを貫いた。
「23世紀の科学だぜ!ありえねぇ!」
暗黒戦士はかなり驚いている様子だが、少し笑っていた―
「くそ!何が目的だ!」
出木杉が汗を滝の様にかきながら叫んだ。
出木杉の前にはやはり暗黒戦士と思われる男がニヤニヤ笑いながら立っていた。
暗黒戦士の手には鋭い悪魔の様な形をしたナイフが握られていた。
それに比べ、出木杉が持っている武器は近くに落ちていたプラスチックの欠片である。
どう見ても、出木杉の方が明らかに不利だ。不利すぎる。
シュッ 暗黒戦士が手に握っているナイフを出木杉に向けて投げた。
そのナイフは出木杉の足を掠り、アスファルトの地面へ突き刺さった。
「そんな・・・コンクリートを刃物が貫くなんて・・・」
出木杉は驚いた、天才的な頭脳を持っているからこそかなりの驚きを感じるのである。
暗黒戦士はポケットからもう一個、さっきと同じナイフを取り出した。
また投げる気だろうか。出木杉は大ピンチだった―
「のび太君・・・?皆?」
暗黒戦士になったドラえもんは静かに彼らのピンチを感じ取っていた―
「何で笑っているんだ・・・?」
のび太は暗黒戦士が少し笑った事に対し疑問が浮かんだ。
暗黒戦士はのび太に武器を破壊され不利なはず、なのに暗黒戦士は笑っているのだ。
何故だか知らないがのび太の体が震え、鳥肌が立った。恐怖しているのだ。
暗黒戦士はゲラゲラ笑いながら四次元ポケットに手を入れた。
「ジャンボガンごときでこの俺様とやるってのか?甘いんだよ」
暗黒戦士はそう言うとポケットから大砲の様な物を取り出した。
その大砲の様な物はドラえもんの秘密道具の大砲系とは少し違っていた。
「この大砲の名は闇砲って言ってなあ、23世紀後半の最強兵器と呼ばれた品物だ。」
暗黒戦士はそういうと四次元ポケットから銀色のライターを取り出した。
のび太はそれを止めなきゃと思ったが、動けなかった。
この暗黒戦士と出会う時の恐怖がもう一度、さらに強くなって蘇ったのだ。
暗黒戦士は闇砲の導火線にライターの火を点けた。闇砲の先はのび太に向けてある。
闇砲の導火線はパチパチと音をたてながら消え去っていく。
のび太の恐怖は導火線が消え行くと共に倍増していった。
「死にな。」
そう暗黒戦士が言った途端、闇砲から弾が発射された。
その時、のび太の手が動き出し、銃の引き金を引いた。…一瞬、だった。
バァン! ジャンボガンから弾が発射され、その弾は闇砲の弾を貫いた。
暗黒戦士はその光景が信じられなかった。のび太もだった。
そして闇砲の弾の欠片がアスファルトに落下した途端、大爆発を巻き起こした。
のび太と暗黒戦士は反対の方向へと爆風で飛ばされていったが、暗黒戦士はのび太と十メートル位離れた場所でブレーキをかけ、のび太の方へと駆けだした。
そして、暗黒戦士は四次元ポケットから違う道具を取り出した。
これでのび太を殺す気らしく、眼がいかれていた。
「うわあああああ!」
のび太は悲鳴を上げた―
シュッ ナイフを持った暗黒戦士がナイフを出木杉に向けて投げた。
出木杉は足の負傷のせいか、思うように動けずナイフが左肩に直撃してしまった。
「うわああああ!」
出木杉は大きな悲鳴を上げ、暗黒戦士を睨んだ。暗黒戦士はそれを見るとゲラゲラと笑い始めた。
そして、暗黒戦士はポケットからジャンボマシンガンを取り出した。
「フフフフ、これで5人目、順調だな」
暗黒戦士はそう言うと、ジャンボマシンガンの引き金を引いた。
ジャンボマシンガンから何個もの弾が勢い良く発射された。
出木杉は右肩と足の負傷のせいでほとんど動けなくなってしまっていた。
ジャンボマシンガンの弾丸は出木杉の体を容赦なく狙ってくる。
その時間がとてつもなく長い、長い時間の様に感じられた。
もうダメだ。出木杉がそう思った瞬間だった、出木杉の前に一人の男が現れた。
敵?そうでは無かった。その男はジャンボマシンガンの弾から出木杉を守ったのである。
「誰・・・?」
「うわーん!ママ〜!」
そして、スネ夫とジャイアンも暗黒戦士に襲われていた―
「何で・・僕を・・?」
出木杉は思わず眼の前の人物に向けてそう言ってしまった。
命の恩人に対し失礼と頭の中で考えていたのだが、そう言うしか無かったのだ。
男は出木杉の言葉をまるで聞いていなかったかの様に暗黒戦士へと突撃した。
暗黒戦士も男が突然現れたせいでかなり混乱していた。倒すのは楽だった。
男はショックガンらしき物をポケットから取り出すと暗黒戦士の胸に向けて撃った。
暗黒戦士はショックガンのエネルギーが当たると小さな悲鳴を上げその場に崩れ落ちた。
そして男は少し笑うと出木杉の元へと足音をたてながら近づいていった。
「怪我は無いかい?」
男の声は優しく、何所か厳しい声だった。出木杉は右肩と足を指差した。
それを見ると男はポケットからお医者さんカバンの様な物を取り出して出木杉を治療し始めた。
秘密道具を出す所を見るとやはりこの男は22世紀か23世紀から来た男のようだ。
出木杉はみるみる治っていった。ドラえもんのお医者さんカバンでもこんなにすぐは治らないだろう。
「ありがとうござ・・」
ドカァン! 出木杉がお礼を言おうとした時、爆発が起こり、近くにあった家が全て吹っ飛んだ。
「暗黒戦士をナメるんじゃねえよ。暗黒戦士はなぁ、何度死んでも生き返るのさ!ヒャハハハ!」
そう言って起き上がった暗黒戦士からは強力な殺気が感じられた。
殺気なんかでこんな威圧感を感じたのは恐らく出木杉と男の場合初めてであろう。
男は暗黒戦士を見るとポケットからジャンボマシンガンの様な物を取り出し、構えた。
出木杉は男から熱線銃を手渡され、その熱線銃を構えた。
暗黒戦士は何も構えていない、チャンスだ。そう思った出木杉と男は引き金を引いた。
勢い良く銃弾が発射された。だが、その銃弾は途中でその勢いを無くし、空中から地面へと落ちてしまった。
何か秘密道具で細工をしているのだろうか、だが違った。暗黒戦士は秘密道具も何も持っていないのである。
そして、考えられる事はこれだけである。殺気が銃弾を落としたのだ。
「信じられない・・・殺気なんかで・・?」
出木杉は小さな声で呟き、熱線銃を地面へ落とした。
暗黒戦士は静かに静かに、出木杉と男の場所へと近づいてくる。
出木杉と男の恐怖はだんだん、だんだん高まっていった。
不死身の兵士暗黒戦士は勝利の声を上げようとしていた―
カツカツカツ― ここは暗黒戦士の要塞、その廊下をドラえもんが歩いていた。
そしてある扉の前で立ち止まると手を鍵の部分へと押し当て、こう言った。
「暗黒戦士ドラ、入ります。」
それをドラえもんが言い終わると扉が開き、目の前に巨大な戦闘用ロボットが現れた。
そのロボットの周りには暗黒戦士らしき男達が何か騒いでいる。
ドラえもんはその男達の所へと近づき、喋りかけた。
「凄いロボットですね」
ドラえもんがそう言うのを聞いた一人の暗黒戦士は笑い顔になった。
「そうだろう、このロボットは凄いんだ、例えば・・・・・」
暗黒戦士の話は長く、ドラえもんは途中から嫌な顔をし始めた。
その部屋にある戦闘用ロボットは冷たく、静かに戦いの時を待っていた―
「うわああああ!」
そう叫んだ後僕、野比のび太の意識は途切れた―
僕の眼の前には何人もの、僕をさっき襲った人と同じ格好をしていた人がいた。
彼らの後ろには何か、変なもやもやした物がふわふわと浮かぶ様に広がっている。
その物を見た瞬間、僕の腕に鳥肌が立った。さらに体全体が震えている。
ジャイアンに襲われた時やママに怒られた時もこんな感じはしなかった。
しかし、僕はこの感じを何所かで体験していた。……多分ドラえもんとの大冒険で体験していたのであろう。
とにかく、僕はその人達の存在が怖かった。いや、怖いどころじゃない、どう例えたらいいのか分からない位の怖さ―
その人達は一歩一歩僕に、確実に近づいて来る。そして、彼らとの差がとうとう一メートル位になってしまった。
「うわああああああ!」
僕は悲鳴を上げた―
しかし、その悲鳴をかき消す様に、上空から声が聞こえてきた。
その声は段々、段々近づいて来る。……とても優しい声だった。
「い…き…ろ…お…き…ろ…起きろ!」
最後の「起きろ!」で僕の眼がカッと開いた。僕の眼の前にはさっきの景色とは違う景色が広がっていた。
天井には電灯がぶら下がっていて、左右には何か怪しい薬がたくさん置いてある。
そして僕が辺りを見終わった時、僕の前に人が現れた。どうやらさっきの声の主はこの人らしい。
「起きたか、それではまず自己紹介から…」
その人は何の前触れも無く、少し笑いながら話し始めたのであった。
「ちょっと待って下さい、どうして僕はここにいるんですか?」
僕は思わずそう、その人に向けて大きな声で言ってしまった。
「ワシがお主を助けたんじゃよ、あの悪魔、暗黒戦士からな…」
その人はそれを聞くと、少し苦笑いをしながらどうして僕がここにいるのか経緯を話し始めた。
その人によると、その人は僕が暗黒戦士に秘密道具で襲われているのを発見し、ウルトラストップウォッチを発動したらしい。
それで偶然気絶していた僕をどこでもドアでここに運んで、今僕がここにいるらしい。
だが、これで僕の頭の中にまた新たな疑問が浮かび上がった。
「じゃあ、どうしてあなたは未来の、秘密道具を使えるのですか?」
それを聞くとその人は何も喋らず、この部屋の出入り口だと思われるドアへと近づいていった。
「ワシの名はニコ博士じゃ。…今話せるのはこれ位じゃ。静かにしているのだよ」
その人、いやニコ博士はそれを言うと、静かに去って行った―
「ジャイアン、どうすればいいの?」
「そんな事、俺が知るかよ!」
ジャイアンとスネ夫は暗黒戦士から猛スピードで逃げていた。
暗黒戦士はケラケラ笑いながらジャイアンとスネ夫に近づいて来る。
その差は段々、段々近づいていき暗黒戦士の手がジャイアンとスネ夫に向けて伸びていく―
「うわ〜ン!ママ〜!」
スネ夫が泣きながら思いっきり叫んだ―
カツカツカツ― 静かな研究所に一人の男が歩いていた―
その男の名前はニコ博士― 22世紀と関わりがあると思われる男である。
彼、ニコ博士は真剣な表情をしながら、研究所の中で一番厳重な部屋のドアで立ち止まった。
そのドアはそう、例えるなら薄い大岩の様にゴツゴツしていた。
ギイィィ― 古びたドアを開ける音が研究所に響き渡り、ニコ博士はそのドアの向こうへと静かに向かった。
ドカァン― 暗黒戦士がスネ夫に手を伸ばし襲おうとした瞬間だった。大爆発が起きたのだ。
その爆風のせいか、暗黒戦士とジャイアンとスネ夫は10メートル位吹っ飛んだ。
「!????????…」
三人は誰もこんな事が起こるなんて予想もしてなく、かなり混乱していた。
しかも辺りは爆発の煙のせいで誰がいるのか全く分からない状況へとなっていた。
バァン! 煙に包まれているこの道路に冷たい銃声が響いた。
ジャイアンとスネ夫はその銃声のせいでさらに恐怖が高まった。
「自分が撃たれるんじゃないか…?」二人はそう考えてしまったのだ。
少し経つと、煙が消え銃声が聞こえた場所には一人の男と倒れている暗黒戦士の姿があった。
ジャイアンとスネ夫はその男を見て、思わず腕を構えた。敵かも知れないという恐怖が自動的にそうさせたのである。
しかし男は二人に攻撃をしないで、暗黒戦士を殴り始めた。
「少年を二人も脅えさせるなんて……いけねぇなぁ、いけねぇよ」
男はそう呟くと暗黒戦士をガラスの破片が舞っている家の残骸へと蹴り飛ばした。
「あなたは……?」
スネ夫がそう言うと、男は明るい笑顔を見せ喋り始めた。
「俺の名はルード。ある研究所の研究員の一人さ」
男、いやルードはそう言うとサイドポケットに付けてある四次元ポケットからどこでもドアを取りだすとそのどこでもドアの向こうへと入って行った。
ジャイアンとスネ夫はこの出来事に驚き、しばらく動けなかった。
二人はドラえもん以外の人が四次元ポケットを持っている事が不思議でたまらなくなって来ているのだ。
「おい、てめぇら。来るなら来いよ。暗黒戦士の被害にあって才能のある少年を助けるのが俺の仕事だ」
ルードはそう言うとどこでもドアを閉めるふりをした。
ジャイアンとスネ夫はそれを見ると慌ててどこでもドアの中へ飛び込んだ。
ピピ……ガガ…… 出木杉を助けた男のサイドポケットからそんな音が聞こえた。
出木杉はその音も聞こえない位混乱していたが、暗黒戦士と男はその音をしっかりと聞いた。
「まさか……お前らその『科学』を完成させているのか……?」
暗黒戦士はそう言うと、殺気を消し少しずつ後ずさりを始めた。
男はその暗黒戦士が言った言葉を聞くと、静かに笑いポケットから音の根源と思われる箱を取り出した。
「まだ未完成だがニコ博士が作動してくれたみたいだ。てめぇら位は……殺す程の威力は持っているぜ。」
パカ 男はそう言うとその箱を開け、笑い始めた。
男の顔は少しの怒り、そして笑いが混じった様な顔になっていて少し怖いぐらいだった。
その箱からは何か白い物体が現れ、その物体は勢い良く暗黒戦士のいる場所へ攻撃をした。
その攻撃の仕方はいったて単純な物で白い物体がレーザーを発射しただけに見えた。
だがそれを喰らった暗黒戦士は黒い物体を出しながら倒れていった。
起き上がる気配も無くなり、出木杉の緊張の糸がプツンと切れた。
「挨拶が遅れましたね。私の名前はテイル、ある研究所の研究員です。」
男、いやテイルはさっきとはまるで別人の様な優しい微笑みを見せながら出木杉に言った。
ギイィィイ のび太がいる部屋のドアが音をたてながら開いた。
のび太はその音で敵かと思い、立ち上がりジャンボガンを構えたが、ドアの向こうから現れたのはジャイアンとスネ夫とルードであった。
「ジャイアン!スネ夫!」
のび太はかなり驚き、思わずしっかり握り締めていたはずのジャンボガンを落としてしまった。
ジャイアンとスネ夫も結構驚いているらしく、言葉にならない言葉を発し始めていた。
ルードはそれを見ると少し笑い、そのまま笑いながら出て行った。
「どうして二人がここに……?」
「それが……」
ジャイアンとスネ夫はここまで来た経緯をのび太に話し始めた。
二人が話し終わるとのび太もここまで来た経緯を話した。
「のび太ぁ、ちょっと寝かしてくれないか?凄い疲れて……」
ジャイアンが頭を少し押さえながらのび太に向けて言った。
のび太はもう疲れがとれていたのでコクリと頷いた。
ジャイアンはのび太が寝ていたベッドでまるで泥の様に眠り始めた。
「……」
ジャイアンが寝てしばらく経つと、急にスネ夫が喋り始めた。
「のび太、そのニコ博士が言った事は信用できるのかい?」
「えっ?」
のび太はその質問に答えられなかった。のび太はニコ博士が助けてくれた時、意識が無かったのでその時の事は全く覚えていないのである。
本当にニコ博士が助けたという証拠は無い―
「じゃあもしかしたらニコ博士は……敵かもしれない」
スネ夫が言った事に対しのび太はかなり驚き、立ち上がった。
「そんなはずは……」
のび太がそう言いかけた時、部屋のドアがいきなり開いた。
のび太とスネ夫はその音に反応し、いつでも戦えるように身構えた。
「のび太君!スネ夫君!」
そう叫んだドアの向こうの人物は暗黒戦士に襲われていた出木杉であった。
出木杉の後ろには暖かい目で三人を見ているテイルの姿があった。
「君もか」
のび太は出木杉にトボトボと近づきそう言い放った。
三人が再会の喜びを分かち合っている中、ドアの向こうにいたテイルが三人に向けて言った。
「もうすぐ会議室で会議がある。君らも行かなければいけない事になっているのでそこにいる剛田君を起こしてくれ」
出木杉はどうしてジャイアンの名前を知っているのか疑問に思ったが、言われるがままにジャイアンを起こした。
ジャイアンはまだ完全に疲れがとれていないらしく、かなりイライラしている様子であった。
テイルは四人に「着いて来い」と言い、部屋の外を歩き出した。
四人はテイルに小さな足音をたてながら着いていくしかなかった。
「静香ちゃんはどうなったんだ……?」
四人は歩いている途中、のび太のその一言で考え始めた。
ドラえもんはともかく、静香は練馬区にいたはずなのである。
なのにこの研究所にはいないのだ。おかしいと誰でも思うであろう。
「着いたぞ」
四人が話している途中で、テイルが立ち止まり四人へ言った。
「あっはい」
四人はその部屋のドアを開き、会議室の中へと入っていった。
「……」
会議室の中にはニコ博士と、その他ルード等の研究員がいた。
四人は空いている席へほとんど音をたてずにスッと座り、ニコ博士の方を見た。
「それでは、会議を始める」
ニコ博士がそう言った途端、他の研究員達がノートを開き、ペンを持った。
「まずそこにいる少年達、野比君、出木杉君、剛田君、骨川君に言っておこう」
ニコ博士は少し笑いながら四人の方に向け言い放った。
四人は緊張してあまり言葉を聞き取れない状況だったが、ニコ博士が言ったその言葉はハッキリと聞こえた。
「我々は君達を襲った闇の兵士、暗黒戦士達と対立する組織である」