ジージージー・・・ミーンミーンミーン・・・
大きな大きな森の中。蝉たちの声が響き渡り、木々の葉の間から陽の光が差し込んでいる。
その中を古めかしい着物を着た少女が歩いており、やがて森を抜けて小高い丘へたどり着く。
そこから小さな町を見渡す彼女のその顔はどことなく寂しさを感じさせた。
大長編ドラえもん
のび太と夏の精霊
所は変わって東京都練馬区月見台すすきヶ原。
その町の空き地に四人の子供たちが佇んでいた。
一人は眼鏡をかけた少年
y一人は狐に似ている少年
yy一人はゴリラに似ている少年
最後の一人はおさげを結った可愛らしい少女。
ご存じのび太、スネ夫、ジャイアン、しずかである。
四人はぼんやりどこまでも青い空を見上げ、ハァとため息をついた。
「あーあ。何か面白いことないかなあ・・・。」
のび太がぼやく。
「そうね。プールももう飽きちゃったし・・・。」
しずかも同意する。
「もうぼくはスイスに避暑に行ったしなぁ・・・。」
スネ夫の少し自慢が入った台詞をみんなは軽く無視した。
「・・・おお!!良いこと思いついたぞ!!!」
ジャイアンが手を叩きナイスアイデアと言わんばかりに叫ぶ。
「「「何々!?」」」
三人がジャイアンのアイデアに少しだけ期待を寄せる。
「ビッグアーチスト剛田武の夏休みスペシャルリサイタルだ!!」
みんなの顔から期待の笑顔が消え去った。
「ジャイア〜ン。リサイタルはついこの間やったばかりじゃない。ぼくはまだあの時の感動の余韻を残しておきたいなぁ・・・。」
「そ、そうか・・・?」
「ウン、そう!!」
さすがスネ夫。巧みな話術により夏休みスペシャルリサイタルの企画を見事白紙に戻した。
まさに口先の魔術師である。
(助かった・・・。この暑さであの歌を聴かされたら・・・。)
(三途の川を見るだけじゃ済まないところだったわ・・・。)
のび太としずかはホッと心の中で安堵する。
「じゃあスネ夫は何か良いこと思いついたのか?」
「え・・・。ええと・・・。」
スネ夫は突然話を振られてしどろもどろになる。
「やっぱりここはコンサート・・・。」
「はいはいはーい!!!」
ジャイアンの発言を遮るかのように大きな声を出して手を挙げるのび太。
「のび太、何か思いついたのか?」
「み、みんなで旅行するのはどうかな・・・?ドラえもんも入れてさ!!」
「おお!!」
「良いわねぇ!!
「のび太にしちゃあ良いアイデアだ・・・。」
スネ夫も一応認める。
「で、どこいくんだ?山か?海か?それとも外国か?」
「え、ええとぉ・・・。」
さっきのスネ夫と同じような状態になる。
「やっぱり無計画(ノープラン)かよ。」
「!!じゃ、じゃあスネ夫はどこに行くか考えたか!?」
「・・・四畳半島の別荘とか軽井沢とか。」
「それじゃあただの避暑じゃん!!そんでもってどうせまたぼくを置いていくんだろ!!」
のび太はズビっ!とスネ夫を指さす。
「指さすなよ・・・。(鋭いやつ!!)」
「あーあ。今年は血湧き肉躍る冒険物語はなしって事かあ。」
みんなは再び青空をぼんやり見上げてため息を漏らす。
「みんなどうしたんだ。ぼんやりとつまらなそうに・・・。」
「「「「先生!!」」」」
現れたのはみんなの担任、先生だった。
いつものスーツとネクタイという暑苦しい格好ではなく、ポロシャツを着たラフな姿だった。
「先生、実は・・・。」
みんなはさっき自分たちが話していたことを話す。
「そうか・・・。なら良いところを紹介しよう。」
「「「「ええ!?」」」」
「そんなに驚かなくても良いではないか・・・。先生も君たちには有意義に夏休みを過ごしてもらいたいからな。それに・・・。」
「それに・・・何ですか?」
「子供の時だけだからな。楽しい夏の時間を過ごすことができるのは・・・。」
少し遠い目をして何かを懐かしむかのような表情になった先生をみんなは見つめる。
「すまんすまん、変なことを言って。実は私の友人に××県の神楽町という町に住んでいる人がいてね。」
「「「「神楽町?」」」」
「前に訪ねたことがあったんだがのどかで凄く良いところだったよ。」
「でも、先生。ぼく達お金を持っていません。」
「民宿とか無理だと思います。」
「まさか野宿しろって言うんですか!?」
「ははは!!まさか。その知り合いの家に泊めてもらえるよう頼んでおこう。」
「あ、ありがとうございます!!」
「源くん。泊めてもらえることが決まったら君に連絡しよう。後は自分達で連絡し合いなさい。」
「「「「はーい!!」」」」
その日の夕方・・・。
「のび太ー。しずかちゃんからお電話よー。」
ママの呼ぶ声が聞こえる。
「はーい!!」
ママから電話を受け取るとのび太は話し出す。
「もしもし、しずかちゃん?」
「こんばんわ、のび太さん。さっき先生から連絡があったの。オーケーだそうよ。」
しずかはうれしそうな声で話す。
「ホント!?」
「ええ。だからちゃんと荷物の準備をしてですって。電車を利用するから切符も買うのよ。」
「いつ出発するの?」
「二日後の朝よ。七時半に電車がくるからその前にちゃんと月見台駅に来なきゃだめよ、のび太さん?」
「分かってるよ。じゃあドラえもんにも伝えてママ達にも話しておくから。」
「分かったわ。それじゃあ切るわね。」
「うん、バイバーイ。」
ガチャ。
受話器を置いて居間に向かう。
「ママ、パパ!!二日後にドラえもんとしずかちゃん達とで旅行に行ってくるね!!」
「ええ!?」
「なんだって?」
「ええ、そんな話、聞いてないぞ〜!?」
ママ、パパ、ドラえもんの三人はかなり困惑している。のび太は順を追って説明することにした。
その頃、神楽町の森では冒頭に出たあの少女が空を眺めていた。そして彼女は呟く。
「今年の夏は・・・。いつもと違うことが起きそうね。」
少女の顔は嬉しそうに微笑んだ。
つづく
次回予告
駅を出るとそこは、
夏の世界だった。
蝉の声が響き渡る 「わあい、
猫って言ってもらえたぁ!!」
「ただいま!!」 木の陰から
神楽町の清明の森 覗くひとりの少女
次回、
大長編ドラえもん
のび太と夏の精霊
第二話
〈作者コメント〉
始まってしまいました大長編ドラえもん小説。かなりおかしな所が有ると思いますが無事に完結できるよう頑張ります!!(次回予告は某アニメのパクリです。スイマセン・・・・・。)
「早くしろ、急げ!!」
「のび太さん、急いで!!」
「ゴメン、遅くなって!!はあはあ・・・。」
「はあはあ・・・。のび太くん、なかなか起きないんだから・・・!!」
のび太とドラえもんは駆け込み、荒い呼吸を繰り返す。
「とにかく電車に乗りましょう。」
ドラえもん達は何とか無事に電車に乗り込むことができた。
「間に合って良かったぁ・・・。」
のび太は座席に座り、タオルで汗を拭く。
「「まったく・・・。」」
ジャイアンとスネ夫は苦虫を噛み潰したような顔をする。
「武さんもスネ夫さんもそんな顔しないで。」
「そうだよ。」
しずかとドラえもんが二人をなだめる。
そして五人を乗せた電車はガタンガタンと揺れながら進んでいく。
やがて風景は都会的な町並みから少しずつのどかな自然あふれるものに変わっていった。
「神楽町駅ー。神楽町駅ー。お降りの方は、お忘れ物の無いようにご注意ください。」
電車のアナウンスが流れる。
「着いたよ。起きて、のび太くん。」
「う〜ん、もう着いたの・・・?」眠たそうに目をこすり、アクビをする。
電車から降りて駅を出ると、そこは夏の世界だった。
ミーンミンミンミーン・・・。ジージージージー・・・。
蝉の声が響き渡り、のどかな風景が広がっている。
「あなたたちがしずかちゃん達ね?」
「え?」
前を見ると優しく微笑むまるで聖母や仏様のような女性が立っていた。
隣にはツインテールで少し気が強そうな女の子がいる。
「私は東目谷アオイ。この子は私の娘のツグミ。よろしくね。」
「ぼ、ぼく野比のび太です。」
「源静香です。」
「骨川スネ夫です。」
「オレ、剛田武と言います。ジャイアンと呼んでください。」
「ぼくドラえもんです。よろしくお願いします。」
「ドラちゃんはウフフ、猫さんね?」
アオイが優しく言う。
「わあい、猫って言ってもらえたぁ!!」
ドラえもんは凄く喜んでいる。
普段タヌキとかダルマとか言われているからその喜びもひとしおである。
「アタシはタヌキにしか見えないけど・・・。耳ないし。」
「!!!」
ドラえもんは動きが止まり、その場に崩れ落ちる。
「コラ、つぐみ。」
「だってぇ・・・。」
「良いんだよ。ドラえもんは本当にタヌキかダルマにしか見えないんだから。」
のび太はつぐみに笑って話す。
「のび太くん!!」
「ドラちゃん、落ち着いて。」
「まあまあ・・・。」
「そう怒るなって。」
「うう・・・まったく。酷いなあ・・・。」
ドラえもんは少し納得していなさそうだが怒るのをやめた。
「みんな仲が良いのね。さあいらっしゃい。」
アオイとっつぐみにみんなはついて行く。
道のほとんどは舗装されておらず、自然の土が主流だ。
また、みんなの思ったとおり畑や田んぼが多く、おじいさんやおばあさんが畑仕事に精を出している。
「さあ、着いた。ここが私たちの家よ。」
みんなの前には石の階段があり、鳥居が立っていた。
「神社なんですね。」
階段を上って本堂の後ろに回り、そこにある家の玄関の前に来る。
「さあ、どうぞ。」
「お邪魔します。」
「ねえ、のび太。」
「な、なに?」
つぐみが少し怒った感じでのび太に言う。
「ここにしばらくいるんでしょ?だったら言うこと違う。」
「・・・ただいま?」
少し照れくさそうに小さく言う。
「・・・ま、いいわ。」
「つぐみの言う通り。ここにいる間、ここははあなた達の家なのよ。だから遠慮しないで、ね?」
「はーい!!」
「ただいまー!」
「ただいま!!」
「おかえり、みんな。」
みんなは家の中に入っていく。
その様子を木の陰から一人の少女が寂しそうに眺めているのを誰も気がつかなかった。
「ごちそうさまでした!!」
「おいしかったぁ!」
「家のママよりおいしいかも。」
スネ夫がナプキンで口を拭きながら言う。
「うふふ。そう言ってもらえるとこっちも作った甲斐があったわ。」
使い終わった食器を洗いながらアオイは嬉しそうに笑う。
みんなは家に入った後、アオイが用意してくれていたお昼ご飯を食べたのだ。
「ところであんたたち、この町にきたんならもちろん入るわよね?清明の森。」
「清明の森?」
「この神楽町にある大きな森の事よ。大きいと言っても迷うほど複雑な森ではないけど。」
アオイが補足する。
「家の裏がちょうど清明の森よ。」
「面白そうだね、早速行こう!!」
「さんせーい!!」
「じゃあ出発しましょう。私が案内するわ。」
「行ってらっしゃい。ケガしないように気をつけてね。」
「はーい!!」
「行ってきまーす!!」
「ここが清明の森かぁ。」
樹齢百年はいっているんじゃないかと思えるほどかなり大きな木々がその青い葉を生い茂らせている。
のび太はその大きな木を思わず見入ってしまう。
「のび太、何してるの。置いていくわよ。」
つぐみたちはいつの間にか森の中に入っていた。
「ご、ごめん!!」
のび太はあわてて後を追った。
つづく
次回予告
きれいに咲く花と
樹液を吸うカブトムシやクワガタ
「メガネ、メガネ・・・。」
歩き出すがすぐ足が止まる
「あなた、もしかして迷子なの?」
少女シア
次回、
大長編ドラえもん
のび太と夏の精霊
第三話
〈作者コメント〉
またまた?な話ですがどうか温かい目で行く末を見守ってください。